膠原病
主な対象疾患
概要
当部門の診療対象として全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、血管炎症候群、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、ベーチェット病、リウマチ性多発筋痛症、成人スティル病などの膠原病を扱っております。関節リウマチ、脊椎関節炎などは整形外科と並行して診療を行っています。
膠原病は結合組織(皮膚・関節など)を中心に全身の諸臓器に炎症を起こす疾患群です。その多くは遺伝的素因に後天的な環境要因が加わり、自己に対する免疫反応として症状を引き起こすとされております(自己免疫性疾患)。膠原病は一つの疾患ではなく、上に挙げたような様々な疾患が含まれます。
膠原病の症状はその疾患毎にある程度特徴がありますが、非常に多彩で、また同じ病名の方の中でも重症度も障害を受ける臓器も異なります。膠原病全体としては発熱、関節痛、皮疹(紅斑、日光過敏症など)などがよく見られる症状ですが、レイノー現象(寒冷刺激などで発作的に手足が真っ白になる)、筋肉痛・筋力低下、心肺症状、腎症状、消化器症状、精神・神経症状、眼や口腔の症状なども起こり、全身の諸臓器に病変が及ぶため、個々の臓器のみならず、全身を診ていく必要があります。当院では総合病院である利点を生かし、各臓器の専門科と連携をとりながら適切な治療を行える体制をとっています。
膠原病の治療は薬物が主体で、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤などを使用します。最も患者数の多い膠原病は関節リウマチですが、従来の抗リウマチ薬、生物学的製剤に加えて内服薬で生物学的製剤と同等の効果を示す標的分子抗リウマチ薬(JAK阻害薬)が使用できるようになり、JAK阻害薬も年々増え、5剤使用できるようになっています。適切な治療を選択することで、症状の改善のみならず、関節破壊進行を防止し健常人と変わらない日常生活を過ごせることを目指す時代になっています。また手術が必要な場合は整形外科のリウマチ専門医と連携して診療にあたります。
その他の膠原病においても治療法は日々進歩しており、生物学的製剤に関しても、全身性エリテマトーデスのベリムマブとアニフロルマブ、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症のメポリズマブ、高安動脈炎や成人発症スティル病のトシリズマブ、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、全身性強皮症のリツキシマブなど、様々な疾患で使用できるようになってきました。また膠原病に合併する間質性肺炎や肺高血圧症といった重篤な病状に対しても様々な薬が承認されています。膠原病の多くは、未だ根治させる治療法は存在しないため、根気強く治療を続ける必要がありますが、適切な治療を継続することで良好な状態を維持できる場合の方が多いです。
膠原病に対する治療薬の多くは免疫を抑える作用があり、治療薬の種類・投与量により異なりますが感染症リスクはあるため、特に強い治療を行う場合には感染症に関して事前に十分な検査を行い、また治療中は感染症発症の徴候がないか厳密に診療を行い、発症時には速やかに適切な対処を行います。なお新型コロナウイルス禍においてコロナ感染の重症化やワクチンに対する効果の低下が懸念されるかと思いますが、2022年4月現在において、比較的多い量のステロイドでコロナ感染の重症化リスクが報告される他は、免疫抑制剤や生物学的製剤でコロナ感染の悪化を起こすというデータはありません。
膠原病が疑われる場合にはお気軽にご相談ください。疾患によりますが、病状が落ち着けば逆紹介させていただいています。関節リウマチに対する生物学的製剤治療では、導入前スクリーニング検査や定期的なチェッ ク、有害事象がおこった場合の対応のみを当院で担当し、普段の治療は各々の施設で行っていただくことも可能ですので、ご希望の場合にはご相談下さい。
新患は完全予約制(月曜日と金曜日)となっております。地域連携室よりご予約下さい。また急ぎの場合は他の曜日にも対応させていただきますので地域連携室にご連絡下さい。
【 膠原病内科診療実績 】
膠原病内科診療患者数
疾患名 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
関節リウマチ | 278 | 293 | 294 |
生物学的製剤またはJAK阻害薬使用 | 108 | 114 | 116 |
全身性エリテマトーデス | 103 | 115 | 119 |
全身性強皮症 | 150 | 153 | 145 |
多発筋炎 / 皮膚筋炎 | 30 | 35 | 35 |
混合性結合組織病 | 38 | 38 | 38 |
シェーグレン症候群 | 126 | 151 | 156 |
成人発症スティル病 | 12 | 15 | 11 |
ベーチェット病 | 24 | 19 | 19 |
高安動脈炎 / 巨細胞性動脈炎 | 12 | 13 | 13 |
ANCA関連血管炎 | 24 | 28 | 26 |
リウマチ性多発筋痛症 | 41 | 45 | 38 |
脊椎関節炎 | 8 | 7 | 8 |
その他 | 71 | 71 | 61 |
総再来患者数 | 753 | 817 | 781 |
2022年度紹介症例の内訳
主訴(重複あり) | 患者数 |
多関節痛 | 79 |
発熱(不明熱) | 36 |
抗核抗体陽性 | 39 |
乾燥症状 | 8 |
その他 | 96 |
膠原病の診療継続依頼 | 17 |
2022年度紹介件数 231名(2021年度 276名) |
医師紹介
中山 剛志 膠原病内科部長
専門:膠原病、リウマチ(※リウマチ外来の詳細はこちら)
日本内科学会認定内科医、専門医、指導医
日本リウマチ学会リウマチ専門医、指導医
日本医師会認定産業医
庄村 聖矢 膠原病内科医師
専門:膠原病、リウマチ(※リウマチ外来の詳細はこちら)
外来診察担当表
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