リウマチ外来
関節リウマチ治療の4本柱
① 基礎療法 関節リウマチに対する理解を深め、生活上の指導も行います。
② 薬物療法 薬によって症状を和らげたり、進行を抑えたりします。
③ 手術療法 人工関節などを用いて関節の機能を回復させます。
④ リハビリテーション 関節の機能や筋力の維持、社会復帰の支援をします。
病院内連携
「関節リウマチ治療の4本柱」で挙げた治療を展開するためには、様々な職種の連携が必要となります。当院のリウマチ外来では医師、看護師、薬剤師、作業療法士など様々な職種で連携し、患者様の生活を多方面から考え、お一人お一人の生活の質の向上が出来るよう取り組んでおります。また、「リウマチ友の会」という会にも参加し、リウマチ患者様同士のつながりも支援しています。
担当者紹介
中山 剛志 膠原病内科部長
日本内科学会;認定内科医、専門医、指導医
日本プライマリケア連合学会;プライマリケア認定医
日本リウマチ学会;リウマチ専門医
庄村 聖矢 膠原病内科医師
加茂 健太 第二整形外科部長
日本整形外科学会;専門医
日本リウマチ学会;指導医、評議員
原口 明久 整形外科副部長
日本整形外科学会;専門医
佐々井 京子 看護師
日本リウマチ財団;リウマチケア看護師
阿部 智子 看護師
日本リウマチ財団;リウマチケア看護師
後藤 町子 看護師
日本リウマチ財団;リウマチケア看護師
骨粗鬆症学会;骨粗鬆症マネージャー
中屋 佳菜 作業療法士
日本リウマチ財団;登録作業療法士
診療
リウマチ・膠原病内科では、生物学的製剤や経口分子標的薬によるリウマチ治療を積極的に行っております。
内科の特徴として、間質性肺炎や非結核性抗酸菌症などの呼吸器合併症や多くの併存疾患を有する患者さんが多数通院しておられ、全身管理をしたうえで個々の患者さまの状態に合わせて最適な治療を行うことを心がけており、治療薬の副作用や感染症などが生じた際にも速やかに対応できる体制を整えています。
リウマチ白書(2020年)では、会員の約半数の方が手術を経験しています。関節リウマチの薬物療法は、骨破壊を起こさないことが目標の1つですが、いったん傷んだ骨・関節の修復は難しいのが現状です。骨の破壊などにより、日常生活に支障をきたした場合に、手術療法が必要となります。先のリウマチ白書と同様に、当院でも、人工膝・股関節手術が多いです。股・肩関節では、上方アプローチとリハビリにより、早期回復を目指しています。
2020年のリウマチ白書によると「靴で悩んでいる」と答えたリウマチ患者さんは81.5%にのぼります。足の問題は疾患活動性の評価や寿命に直接影響するわけではないため、治療に関わる医師や患者さん自身も注意が向かないことが多いと思われます。しかし、足の問題をそのままにしておくと日々の活動量がゆっくり減少していきます。すると、全身の筋肉量が低下(サルコペニア)し、ひいては健康寿命の短縮につながってしまいます。
当科では足に問題をかかえているリウマチ患者さんに対して保存治療と手術治療を行っています。保存治療としては装具療法を中心として行っています。リウマチ患者さんの足は複雑な変形を呈している事が多く、必要に応じて型取ったデータを3Dの情報に変換し解析、数値化してフィット・矯正する装具を作成しています。足部の変形によって感染が生じた方や、痛みが強く日常生活を送るのに支障がある患者さんに対しては手術療法を行います。手術の内容としては関節破壊が強い場合は関節固定や切除形成、人工関節を選択せざるおえない場合もありますが、可能な限り関節を温存する手術に取り組んでいます。
外来診療日
内科
新患:月・金 8:15~11:15(完全予約制)
再診:月~金 8:15~11:15
整形外科
新患/再診:月~金 8:30~11:00
再診:月・水 12:00~14:00
手術日:火・木曜日
ストレッチ筋トレ-BELU-
運動は、関節リウマチ患者においても、日常生活動作を改善することが報告されています。特に、あらたに運動をはじめようとしている方には、負荷の少ない自重運動が勧められています。自重運動は道具を使わず、自分の体重を使った運動ですが、体重をかけない体操も自重運動に含まれます。また、関節リウマチでは、関節の変形や術後関節がある場合、低負荷の運動が適切です。今回、当院整形外科医と作業・理学療法士が共同して、ストレッチの延長線上にある筋力トレーニング(ストレッチ筋トレ)をイメージして、自重運動プログラムを作成しました。歩行と4種類の下肢自重運動と4種類の上肢自重運動からなっています。ベル(BELU: Body-weight Exercise of Lower and Upper extremity)と愛称をつけました。運動習慣のない人を念頭におき、また、自宅で1人でも安全にできるように、立位の運動2種は壁に手をついて行い、残りの6種は座って行える運動を選択しています。ちょうど良い、少しきついと感じるくらいを負荷の目安とします。楽に感じるようであれば、セット数を増やすか、BEAST (BELU additional strengthening) を併用するか、他の運動を追加しましょう。運動負荷を強くできない場合には、毎食の適切なたんぱく質摂取による強化も効果的です。
2022年、当院通院中の患者さまに、協力いただき、その効果を明らかにする調査を実施しました。BELUを6週間行なうことで、歩行速度は速くなり、筋力もアップしました(2023年3月九州リウマチ学会発表)。
小冊子
調査時、参加者は、作業・理学療法士の指導を受けてから、自宅でBELUを行いました。指導がなくても、行える運動ですが、痛みが出る運動は控えてください。全てを行わなくても、部分的に行ったり、思い出した時に行ったりしてみて良いです。ただし、きつく感じるまでは行わないでください。以下から、印刷すれば小冊子になる版とA4サイズになる版がダウンロードできます。
小冊子 BELU and BEAST / A4版 BELU and BEAST
日誌
BELU用の日誌と、BELUおよびBEAST用の2種類の日誌がダウンロードできます。
作業・理学療法士向けマニュアル
BELU用とBEAST用にそれぞれ指導マニュアルがダウンロードできます。
BEAST用には、調査の時に、ルール化した強化運動追加フローチャートがあります。
測定用紙
当院で使用している測定用紙(A4サイズ1枚)がダウンロードできます。全てを測定する必要はなく、最少のセットは、Timed Up and Go (TUG) testと握力です。測定用紙では、太字で表記しています。作業・理学療法士が測定する時には、上記2つに加え、母指のTip to palmer distance (TPD)、側方ピンチ、肘屈曲角度、上腕二頭筋筋力、膝進展角度、大腿四頭筋筋力を計測しています。測定用紙では、下線で表記しています。その他の項目は、調査時に測定した項目です。
測定用紙はこちら
関連論文・学会発表
関連論文
1. 女性関節リウマチ患者に対する自重運動において分枝鎖アミノ酸(BCAA)強化と 作業・理学療法士による運動負荷調整の比較:非盲検ランダム化比較試験. 九州リウ マチ. 2023;43(2):114-119
2. 関節リウマチ患者において利き手筋力、利き手比とTPDが HAQと DASHに及ぼす影 響. 九州リウマチ. 2024: vol44(1); 19-25
3. 自重運動BELUによる介入が女性リウマチ患者の歩容に与える影響ー3軸加速度を用 いた検討ー. 九州リウマチ. 2024: vol44(1); 26-30
4. (open access) Kamo K, Haraguchi A, Hama D, Kamo N. Bodyweight Exercise of Lower and Upper Extremities for Female Patients with Rheumatoid Arthritis and the Timed Up-and-Go Test. Prog Rehabil Med. 2024 Mar 16;9:20240009.
5. (open access) 加茂尚子, 田中マキ子. 関節リウマチ患者における在宅運動療法 の現状とその実施要因. 日本看護科学会誌 J. Jpn. Acad. Nurs. Sci., Vol. 43, pp . 899–908, 2023
学会発表
2023年
1. 九州リウマチ学会:Body-weight Exercise of Lower and Upper extremity(BELU):介入試験
2. 日本リウマチ学会:女性関節リウマチ患者の行動体力が機能的寛解に及ぼす影響
3. 関節病学会:HAQ を構成する 20 項目と筋力や関節可動域の関係、またそこから 予測する関節リウマチ患者の日常 生活動作能力
4. 看護研究学会:関節リウマチ患者の在宅運動療法に関する意識と行動の実態調査
5. 九州リウマチ学会:関節リウマチ患者において利き手筋力、利き手比とTPDが HAQ と DASHに及ぼす影響
6. 九州リウマチ学会:自重運動BELUによる介入が女性リウマチ患者の歩容に与える 影響ー3軸加速度を用いた検討ー
7. サルコペニア・フレイル学会:女性関節リウマチ患者のSMIと関連する身体機能評 価
8. 日本看護学会学術集会:女性高齢関節リウマチ患者の自重運動の継続と自己効力 感の関連
2024年
1. 九州リウマチ:自重運動(BELU)開始後6週時の自己効力感と1年後の運動継続率
2. 日本リウマチ学会:高齢女性関節リウマチ患者における転倒予測因子としてのHAQ
3. 日本リウマチ友の会支部集会:関節リウマチに対する手術療法と運動療法BELU( 自重運動)
4. 中国・四国地区リウマチの治療とケア教育研修会:BELU-ストレッチ筋トレ-から みる多職種連携